いのいち勉強日記

Turingで自動運転の開発をしています。京大でPhDをとりました。Kaggle Grandmasterです。

【書評】圧巻!「AI時代の新・ベーシックインカム論」一歩踏み込んだ理解を!

「人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊」の著者・井上智洋さんの待望の新刊!
「AI時代の新・ベーシックインカム論」
AI&マクロ経済学の研究を行うパイオニア的存在の井上智洋先生が
「ベーシックインカム」について徹底解説されています!!!
 
「貨幣制度」「政治経済思想」まで踏み込んで解説している本書は
ベーシックインカムについてより深く学べます!!!
もちろん有名な「純粋機械化経済」の解説も!
 
率直な感想は、「知識がめっちゃ増えた!」です!
知らないことがたくさん出てきました!
しかし、
解説がわかりやすいので納得しまくりで面白い!
なるほどな〜〜〜」のオンパレードでした!

 
気になったとこをまとめてみました!

 

「生活保護 vs BI」労働意欲がなくなるのは?

 
ベーシックインカムにより「労働意欲が減る」ということについて
「インセンティブ」に着目した解説はわかりやすかったですね。
 
インセンティブとは、働く意欲のこと。
 
生活保護の場合は実は働いたらその分
もらえる額がどんどん減っていっちゃうんですね。
つまり、
生活保護は働いても結局手に入る分は同じなんです。
 
それなら働かないでもらえる分もらっといたほうがいいじゃん、
ってことで生活保護の泥沼にはまってしまう人が多くなるんですね。
つまりインセンティブがなくなるってことです。
 
では、ベーシックインカムはどうか。
 
所得税を一定割合増税したとして財源を確保したとしても、
低所得者は当然、働けば働くだけ収入が増えるんですね。
つまりインセンティブがちゃんと残るんですね。
 
これを、ベーシックインカムにインセンティブをとったらどうなるか、
生活保護にインセンティブをつけたらどうなるかなど、
丁寧に解説されていますので、詳細は本書をゆっくり読んでいただければと。
 
結局のところは、
「ベーシックインカムとは、インセンティブをつけた生活保護」
といえます。じゃあ、
生活保護にインセンティブをつける政策をしたらいいのでは?
と思うかもしれませんが、そんなことはありません。
 
なぜなら、生活保護には「行政コスト」がかかるから!
行政コストとは、生活保護を受けるに値するかを調べるための労力のことで、
これは「実質コスト」といい単純に損しているんです。
だってベーシックインカムにすればそんなコストはほとんどかからないから。
つまり、集めた税金の分だけ国民に還元されるので
ベーシックインカムのほうが効率がいいんです!

 
ベーシックインカムの優位性がよくわかりました!
 
「生活保護 vs ベーシックインカム」が私の中でひと段落しました!
 

信用創造は諸悪の根源?変動BIを実施するためには。

 

信用創造とは、
銀行が初めに受入れた預金 (本源的預金) の貸し付けによって
マネーサプライ(通貨供給量)を創造できる仕組みを表す。

(引用 Wikipedia)


つまり、銀行はお金を預けてもらって、
そのお金を借金として貸すことによって
世の中のお金の量を増やしているんです。
つまり、世の中のお金はいま民間銀行が増やしている状況。
しかし、その制度のせいでバブルとか不況が
繰り返し起こらざるを得ない状況に陥っているといいます。
 
なぜこんな話になったかと言うと、
「変動ベーシックインカム」という制度を
実施するためには政府がお金を作れるような状況にしなくてはならない

というところから来ています。
 
政府が自由にお金を作り、
必要に応じて国民に分配できるようにすることで
景気をしっかりとコントロールできるのです。
 
なので「お金を作る役割」を
民間銀行から政府に戻すことが
かなり重要だと主張しています。

 
それにより景気に応じた分配金の
「変動ベーシックインカム」
それを導入することができるようになるのです。
 
常に一定額分配される「固定ベーシックインカム」に加えて
この「変動ベーシックインカム」を行うことで
筆者の考える理想の制度が完成します!
 
解説を読んでいて、
確かに今の貨幣制度に違和感を感じました。
信用創造により銀行はかなりの量のお金を生み出すことが
できるようなのですが、それが現状、投機に回されているのです。
なので、政府は、お金を作りすぎてインフレに陥らないようにするルールのもとで
貨幣を発行できる制度をつくるのが合理的に感じました。
 
うーん!この貨幣制度については全然知りませんでしたね!
でも歴史からしっかり語られているのでわかりやすかったです!
銀行の信用創造とか当たり前のことと思いすぎていて、
まさかそんなところからベーシックインカムにまで繋がっていくとは。
これはなかなか他では学べない気がしましたね!
 
 

他にも盛りだくさんですよ!

 
他のトピックもめちゃくちゃ面白かったので
簡単にまとめておきます!
 

人工知能とベーシックインカム

 
人工知能とベーシックインカムの関係についても
もちろんまとまって書かれていましたので
こちらを読んでもエッセンスを学ぶことができます!
将来訪れる「純粋機械化経済」がこれまでとはどう違うのか、
なぜベーシックインカムを考えなくてはいけないかがわかるので
この内容はぜひ押さえておきたいところですね。
 

政治経済思想とベーシックインカム

政治経済思想とベーシックインカムのところもすごい!
 
「左翼」と「右翼」ってなんとなく使ってましたけど、
本来の意味からどのような変遷を遂げて今に至るかが解説されていて
筆者の造詣の深さに畏怖の念を抱きましたね。
まさかベーシックインカムの本でそんなところまで学べるとは。
 
政治経済的思想では「働かざる者食うべからず」の思想についても
歴史を振り返りながら書かれていてすごく勉強になります。
やっぱり歴史から学ぶってすごく大事ですね。
納得感が全然違う。
 
こちらはもはや、ベーシックインカムとは関係なしにでも
読んでみたら面白いと思う内容ですね!
 
 

まとめ

 
ベーシックインカムについての視点がかなり広がりました!
 
それだけではなくてその周辺の知識もかなり増えました!
 
この本は軽くベーシックインカムって何?って学ぶ本ではないですね。
ベーシックインカムについて他の人よりも
一歩踏み込んだ知識をつけることができる本ですね!

 
とても勉強になるのは間違い無いです!
解説がわかりやすいのでちゃんと理解もできます!
 
ぜひ一度読んでみてください!
 
人工知能については前作もぜひ読んでみてください!
こちらもすごくわかりやすいし得るものが多いです。
 

 

「人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊」はこちら

ブログの記事はこちら
www.inoichan.com