いのいち勉強日記

Turingで自動運転の開発をしています。京大でPhDをとりました。Kaggle Grandmasterです。

[読書メモ] BUILD 真に価値あるものをつくる型破りなガイドブック

最近読んだ「BUILD」がとても面白く、スタートアップで働いている自分にとって参考になることが多かったので簡単に感想をまとめます。

この本の筆者、トニー・ファデルさんは一言で言えばAppleでiPodやiPhoneの開発を率いた著者によるコーチング本です。もう少し、筆者がどういう人かを説明します。若い頃からいくつかスタートアップの立ち上げをした後、ゼネラルマジックという凄腕エンジニアが集うスタートアップに入るも技術志向すぎてうまくいかず。次に、フィリップスという会社のCTOでプロダクトを2つ夜に送り出したあと、大手を一瞬経て、Appleに入ります。Appleで10年間働いて、iPodとiPhoneの開発をリード。Apple退職後は少し休んで、Smart Homeを目指したネストを創業。最終的にはネストをGoogleに売却し、今はコーチングをしているようです。

ここに上げたとおり、いくつかの小さな起業を経て、イケイケスタートアップでの失敗、Appleでチームを率いての大成功、CEOとして産業を作り会社を売却、そしてコーチングというあらゆるレイヤーを経験しているのが筆者の特徴だと思います。なので本書も様々な視点から書かれているのがわかり、読むたびに新たな視点が得られそうだなと感じています。Appleでの成功談よりもゼネラルマジックでの失敗した話や、大企業に入るも一瞬でやめた苦い経験などうまくいかなかったところが繰り返し出てきます。なぜこれがダメだったのか、どうすべきだったかという話を6部に分けて様々な視点から考察しているのはなるほど感が強かったです。

今の自分の状況と照らし合わせて特に印象に残ったのは、全力で打ち込めるプロダクトに取り組むこととストーリーを大切にすることです。

筆者は最初の頃にスタートアップを起業したり、エンジニアとして働いていた経験もあります。なので、若い頃はお金よりも自分が全力で打ち込めることに全力で挑戦しよう!という熱い言葉が最初の方には多く見られました。この言葉たちはスタートアップで働いている自分にとっては背中を押してくれるものでした。何でもかんでもブラックに働けというわけではなく、働き始めて何もない自分の武器はなんでもやること、でもやるなら自分が全力で取り組めると思うことにしようぜ、という感じです。言ってる事自体は目新しいわけでもないですが、筆者の経験からくる言葉はより説得力のあるものに感じました。

プロダクトを開発する上でストーリーを大切にするスタイルもとても好感が持てました。私が働いている会社でも会議はスライドベースではなく、ストーリを大切にしたナラティブベースで行われています。そういったスタイルが結局は人を動かすんだというのは何度もうなずきながら読んでいました。AppleでiPodを開発している時のスティーブ・ジョブズとの話だったり、ネストで最初のプロダクトを考えて投資に繋げるときなどストーリがいかに強力で重要かを感じることができました。私も「なぜ」を大事にしたストーリーテリングを今後も意識して伸ばしていきたいと改めて思わせてくれました。

他にも、ゼネラルマジックでの失敗談やAppleでのプロダクト開発、ネストでのプロダクト開発、チームメイキングの話が単純に読み物としてとても身近に感じました。しかし、それ以外にも大規模プロダクトをリードしていく話やCEO視点の意思決定の話、ネストのGoogle売却でのつらそうな話など読み物としては面白いがまだまだ実感がわかない話もありました。 この本はいろんなストーリが盛り沢山なので、自分の仕事でのステージが変わるにつれて何度も読み返したいなと思っています。

ちなみに、何度も登場するゼネラルマジックは映画にもなっているので気になる人は見てみてください。

general-magic.jp