いのいち勉強日記

Turingで自動運転の開発をしています。京大でPhDをとりました。Kaggle Grandmasterです。

【書評】Gunosy創業者・福島良典著「センスのいらない経営」

グノシーの創業者である福島さんが今の社会で成功するための経営のポイントをまとめたのが本書です。「センスのいらない経営」ってタイトルがそそりますね〜!「センスのいらない」ってどういうことかというと、簡単にいうと、「データドリブンな経営」と言えるかもしれません。データドリブンで最新のテクノロジーをうまく生かした福島さんの考え方を学べる一冊だと思います!面白かったポイントをまとめていきたいと思います!
 

 

 
 

テクノロジーを基軸にする!

 
これからの経営方針として常にテクノロジーを意識していくことが重要だということです。これがこれからの社会で必要な考え方です。理由は二つあります。
 
・社会に与えるインパクトが大きい
・スピードが速い、スパンが短い

 
今はテクノロジーの発展が与える社会的な影響がとても大きくなりました。たとえば「人工知能」や「ブロックチェーン」というのを考えただけでも、社会に大きな影響を与えているとわかるかと思います。さらに、スピードが速いというのは、iPhoneが社会に浸透するまでに10年もかからなかったことや、「グーグルが猫を見つけた」というところから画像認識がいろんな分野で使われるまでのスピードを考えるとわかるかと思います。
 
ものすごいスピードで成長していくテクノロジーを常にフォローしとかないと、社会に影響するようなインパクトのあることはできないのだなと考えさせられました。
 
さらに、重要だと思ったのが、テクノロジーを導入する上で大切なのは、その「順番」と言います。「テクノロジーに無知な人は、むやみにテクノロジーを使おうとして、できもしないようなことをしてしまう。そして、技術がまだ追いついてなくて陳腐なものになってしまう。」こういうことになるといいます。
 
したがって、テクノロジーを適切に理解して、今できることできないこと、これからできそうなことをしっかり抑えることが大切だということです。その上で、大きなビジョンを描いて技術を順番に導入して積み上げていくことが大切なのです
 
 

データの使い方が大切

 
常に最新のテクノロジーにアンテナを張っておいて、そのテクノロジーを理解して武器にするのが必要ということですが、その中でも今は「情報テクノロジー」がポイントだといいます。理由は二つあります。
 
・データの量が膨大になった
・データはユーザーの正直な部分

 
データ量が膨大になったというのは、「ビックデータ」という言葉が流行ったことから知っている人も多いかと思います。そして、もう一つの「データはユーザーの正直な部分」というのは、サービスを展開した時、、WebやIoTを使いあらゆる方法でユーザーのデータが溜まってきます。これまでは、アンケートなどでサービスの評価をしていましたが、それでは見えなかったようなユーザーの「潜在的な評価」がログからは見えてきます。大量に取られたユーザーのデータを、統計的に考えて、いかにユーザーの潜在欲求を見いだせるかが重要だということです。
 
データを元に考えていくというのは、グノシーの基礎になっている考え方で、本書の一番重要なポイントだと思います。
 
 

機械を使いこなす

 
グノシーで最も本質的なテクノロジーである機械学習をベースにしたテクノロジーを、本書では「機械」と表現されていました。そして、その機械を適切に使いこなすのが重要な能力だと言います。機械を使いこなすのに大切なポイントはいくつかあります。
 
・機械にどういうデータを与えるか(種類・期間)
・機械に適切な目標を与えられているか
・何の目的を最大化するために機械を導入するか
・機械は不測の事態、極端な事例に弱い
 
こういったことを理解する必要があるといいます。機械が得意なのは「ある事象やタスクに対して、大きな共通の法則が存在し、スケーラビリティが必要なこと」だといいます。そして、どこで機械を導入してどこを人がやるか。ここをしっかり理解して住み分けするのが大切なのです。
 
 

成功するためのポイント

 
本書の中で印象に残ってるのは、福島社長の語られていた心構えです。2つ簡単に紹介しようと思います。
 

・「やりたいこと」と「社会で求めていること」の接点を探す

 
新しい事業をする上で大切なのはモチベーションが続くかどうかです。そして、そのモチベーションの源となるものは「自分のやりたいことかどうか」だと言います。お金を儲けたいからという動機ではやはり長続きしないと言います。そして、それに加えて重要なのは「社会で求められているかどうか」ということです。やりたいだけで社会に求められていない場合はやはり事業はうまくいきません。かといってやりたいことを変に捻じ曲げるのもモチベーションが続きません。大事なのは、「やりたいこと」と「求められていること」を突き詰めていって、その二つが接地する場所を見つけることだということです。これがビジネスを成功させる大きな要因なのです。
 

・「手数の多い人」が勝つ時代

 
先にも述べたように猛烈なスピードで進化していくテクノロジーが社会に大きなインパクトを与える時代では、ポジションを取れるかどうかが重要になります。そして、大きなポジションを取るためには、「最初にやった人」になれるかどうかだといいます。その最初にやってみた人になるためにはなんどもやってみることが大切なのです。ここで大切なのは、「最初にやった人」というのはつまりまだ誰もやっていないことをするわけですから、リスクが伴います。そのリスクを瞬時に見極めることが重要なのです。その時の判断の方法というのが本書を通して語られている「データをもとに統計的に考える」ということなのです。分析された数字を元にすることでリスクを理解し、判断を速くすることができ、新しいことにどんどん挑戦できるというのです。
 
 

まとめ

 
グノシーで実践されていることがベースになっていて説得力のある本でした。タイトルからは想像できないですが、最新のテクノロジーを経営にうまく取り入れるノウハウが語られています。だから、サブタイトルくらいに「テクノロジー」ってワード入れても良かったような気もしますが…。ですが確かにテクノロジーを駆使し「センス」を使わないという意味ではその通りなので、本質をついたタイトルなのだなと思います。
 
そして、この本は面白かったです。1日で一気に読めました。内容も詰まっているのでおすすめです!