いのいち勉強日記

Turingで自動運転の開発をしています。京大でPhDをとりました。Kaggle Grandmasterです。

【書評】「誤解だらけの人工知能〜ディープラーニングの限界と可能性〜」

「人工知能って結局なんなの?」
それに応えるために作られたのが本書です。
面白かったポイントを何点かまとめてみました!
 
本書はデータサイエンティストの松本健太郎さんが
人工知能の専門家、田中潤さんに行なったインタビューをもとに
体系立ててめちゃくちゃわかりやすくまとめられています。
 
「人工知能開発経験者による簡単な説明」
それを心がけたこれまでにない解説書です!
・人工知能について調べてるけどよくわからない…
・専門的すぎるのはちょっと理解できない…

そんな方にぴったりです!!!
 
余談ですが、文中の冗談にキレがあって結構好きです。

 
 

人工知能に関する勘違いとは?

 
人工知能とはなにか?

本書では「人工知能=ディープラーニング」と定義しています。
 
そして、
「人工知能は人間の脳を人工的に作っている」
「なんでもできる汎用人工知能ができたらシンギュラリティが起こる」
といった誤解に対して明確に答えられています!!!

 
本当のシンギュラリティとは何か。

人工知能が人間を超えるとは、100試合ごとに異なる人工知能が登場して、
人間と戦った結果、人間が大きく負け越した瞬間を指していることだと考えてください。

つまり特化型の人工知能が一つ一つ人々の仕事を奪っていくことだということですね。
 
現在の人工知能が「できること・できないこと」も
かなり具体的にわかりやすく解説されています。

また「壁をみて犬と認識する人工知能」や
「グーとパーで寿司を作った子供に感激する話」など
具体例が面白くて読みやすいのも本書の特徴ですね!
 
次の人工知能のブレークスルーを引き起こすのが
「概念への理解」というのも面白かったですね。

 
たしかに、それができればデータ量も少なくできるし
モデルの改善が爆速でできるなーと納得でした。
この技術ができるのに10年以上かかるだろうと予測されていましたが、
5年後くらいにGoogleあたりがパッと大発見するんじゃない?と少し期待してます…

 

人工知能をビジネスに導入するために大切なこと

 
ビジネスで人工知能を導入するために重要なことが3つ挙げられています。
 
一つ目で、かつ、一番重要なのは人材不足です。
人工知能がちゃんとできる人材は世界レベルで不足しており、
アメリカでは年収2000万で採用されているそうです。
 
日本でも人工知能の研究者を育てようと大学の教育課程の整備を
国が打ち立てていますが、それではダメだと一括。
技術の革新が早い分野で、かつ、オープンソースで学べるので
それをどんどん使っていくことが大切だと言います。

 
情報にちゃんとアクセスしていける環境構築が大切だということです。
 
二つ目は人工知能を導入しようとしている組織の勉強不足です。
おそらく筆者らは企業に人工知能を導入したいという話を
持ちかけられる立場だからこそ募る想いがあるのでしょう。

何もわかっていない人のために、
「あなた分かっていませんよと説明する時間を、
なぜ割かないといけないのか疑問が湧いてくるわけです。

導入を検討しているのであれば
せめてディープラーニングで何ができるかぐらいは
勉強してきてほしいという切な願いが込められていました。
 
三つ目は質の高い学習データの不足です。
データ収集は本当に大事で音声データなどは今各社こぞって集めていますよね。
MicrosoftがSkypeを買収したのもつまりそういうことです。
これは企業だけの問題ではなくて日本全体で頑張らないといけないことです。
結局データがなければ何もできないわけですから、
日本産のデータセットを作る意識を高めるのはどの組織も重要ですね。

大半の企業はそもそもデータすら貯めていません。
これは本当に何度も頭を抱えました。

現時点で人工知能の導入を考えていない企業も
この点は留意しとくべきかもしれません。
 

 

ベーシックインカムの導入して「労働=お金を使う」にする

 
筆者らは特化型の人工知能が少しづつだが、確実に様々な仕事に導入されて、
やはり職がなくなる人が増えると予測しています。
 
そこで人々は「労働」から解放されると言います。
そうなった場合、
これまでの「労働の対価としてお金をもらう」という仕組みが
機能しなくなってしまいます。

 
しかし、それでも貨幣経済はなくならないので、
ベーシックインカムのようにお金を配るしかないと言います。
 
面白いなと思ったポイントは
「お金を使う」ことが重要だというところです。

毎回全てを使い切ってもらいます。
不景気で老後が心配だと、みんなお金を使わずに貯めちゃう。
それだと経済が回らなくなるので、貯めちゃいけない、
みたいなルールも必要かもしれませんね。

お金を使うこと自体を「労働」とする、それが筆者の意見です。

一体どうやったら実現できるのだろう…?!とは思いましたが、
もしそうなったら面白そうな社会だなと思いました!!!

 
 

まとめ

 
「人工知能」の最新トレンドや今後の予測は
類書にないくらい具体的でした!!!
やはり人工知能の専門家が書いているだけあって
一歩踏み込んだ内容になっています。
 
ですが、冒頭でも述べられている通り、
松本健太郎さんがすごくわかりやすくまとめてくださっているので、
人工知能を全く知らない人でも十分イメージできると思います。

 
ここで紹介されている以外にも人工知能に関する
最新の知見が紹介されているのですごく勉強になります!
 
あと、なんども言いますが、
ときどき入るジョークがピリ辛でけっこうクセになると思います。
だから、最後まで楽しんで読めます!!!

最後に本書では、
ビジネスマンはまずPythonの勉強をしよう!
と書かれていましたので興味ある方はぜひこちらの記事もみてくださいね!
www.inoichan.com
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